歯の詰め物・被せ物(差し歯)をセラミックにするメリットとデメリットCOLUMN

歯の詰め物・被せ物(差し歯)をセラミックにするメリットとデメリット

2020年03月04日

監修医師:
歯科医師 歯学博士 山田知里

セラミック治療は、見た目が美しいことから、審美的関心が高い方に好まれています。ここではそんなセラミック治療のメリットはもちろんのこと、治療前に知っておくべきデメリットについても解説します。

歯の詰め物・被せ物(差し歯)をセラミックにするメリット

セラミックには、他の素材にはないいくつかの特徴があります。セラミック治療が審美性や機能性、耐久性に優れている理由を解説します。

他の素材と比較して審美的に優れる

セラミックは、金属との比較はもちろんのこと、保険診療でできる白い歯の素材(レジン)と比較しても色や質感、光沢感などすべての美しさに優れています。透明度の高さもセラミック材料の特徴のひとつです。
歯の詰め物や被せ物をセラミックで製作することで、自分の天然の歯に違和感なく近づき、他の歯ともきれいに調和します。歯の色も複数用意されていますので、様々な人の歯の色に近づけやすくなっています。歯科技工士が細かな色の調整を行い、理想に近い色に仕上げます。

金属アレルギーのリスクがない

セラミックのみを使用した治療では、金属アレルギーのリスクがゼロとなります。セラミックは「陶材(とうざい)」とも呼ばれる茶碗のような材料で、金属が一切含まれていないからです。
昨今、歯科治療による金属アレルギーが話題になっていますが、それはいわゆる「銀歯」が原因です。歯科用合金で作られた銀歯がアレルゲンとなり、お口の中の粘膜だけではなく、全身の皮膚などにも症状が認められるようになることもあるとされています。メタルフリー治療であれば、その心配がなくなります。

二次虫歯のリスクが低い

歯の詰め物や被せ物を装着すると、必ず「二次虫歯」のリスクを伴うこととなります。つまり、虫歯の再発です。どんなに優れた歯科治療でも、虫歯の再発リスクをゼロにすることは不可能です。けれどもセラミックの詰め物や被せ物であれば、歯との適合性が高いので、自分の歯と、詰め物や被せ物とのすき間がより少なく、そのリスクを低くすることができます。
虫歯を再発させてしまうと、さらに歯を削ることとなるため、おのずと歯の寿命も縮まります。それを避けるという意味でもセラミックは優れた歯科材料といえます。

自由診療で使う印象材の違いから精度の高いセラミック歯を製作

歯科治療で何らかの装置を作る際には、歯の型採りを行わなければなりません。流動性のあるゴムのような材料をお口に入れる処置です。
保険診療では比較的精度の低い印象材しか使用できないのですが、自由診療であるセラミック治療であれば、精度の高い印象材を使用することができます。その結果、出来上がる詰め物や被せ物の精度も高くなります。つまり、歯とぴったり適合する補綴物が製作できるので、外れたり、すき間から虫歯菌が侵入したりするのを防止することが可能となります。

汚れや着色がしづらい

保険診療で使用する「レジン」というプラスチックは、セラミックと比較すると汚れがつきやすく、また着色しやすい材料といえます。長年使っていく中で黄ばんだり、黒ずんだりするのはそのためです。虫歯や歯周病の原因となるプラークも付着しやすく、結果として虫歯や歯周病のリスクも高いといえます。
その点、セラミックは汚れがつきにくく、着色が起こりにくい材料のため、時間が経っても、美しさが変わらないことが多いです。なぜならセラミックは安定した素材でできており、周囲からの刺激によって変色や変形することが少ないからです。よってプラークや歯石も形成されにくく、歯や周囲の粘膜を衛生的に保つことが可能となっています。

メタルタトゥーのリスクがない

銀歯による詰め物や被せ物の治療では、メタルタトゥーが生じるリスクがあります。メタルタトゥーとは、歯茎に生じる黒っぽい「シミ」のようなものです。
銀歯は、時間が経過していく中で唾液などによって溶かされ、金属イオンが漏れ出てくることがあります。溶かされるといってもほんの一部分ですが、銀イオンのように着色性の強い物質はシミを作りやすい傾向にあります。そんなメタルタトゥーが生じると、お口の中で目立ち、審美性も害されてしまいます。セラミックには金属が含まれていないため、メタルタトゥーのリスクもゼロとなります。

ガルバニー電流のリスクがない

お口の中に複数の金属が存在していると「ガルバニー電流」が生じることがあります。ガルバニー電流とは、アルミホイルを噛んだ時にも流れるもので、「キーン」という不快な感覚が生じるだけではなく、頭痛や吐き気、疲労感なども引き起こすことがあります。これは複数の金属によって構成された銀歯に起こりやすい現象です。
一方、セラミックには金属そのものが含まれていないことから、ガルバニー電流が生じるリスクもゼロとなります。

歯の詰め物・被せ物(差し歯)をセラミックにするデメリット

セラミック治療はメリットの多い歯科治療ですが、当然デメリットも存在します。歯を削って詰め物や被せ物を装着するという処置は、後戻りのできない重要なものなので、デメリットもしっかり理解しておくことが大切です。

日常生活範囲以上の力が加わると割れやすい

セラミックは非常に硬い素材で、そう簡単に壊れることはありません。けれども、セラミック製のお皿と同じように、強い衝撃には割れやすいというデメリットがあります。
例えば、歯ぎしりや食いしばりなどの習慣がある方は、セラミック治療にあまり向いていないといえます。歯を食いしばる時の力は極めて強いので、たとえ丈夫なセラミックでも割れてしまうことがあります。例えると、硬い茶碗を地面に落とすと割れてしまうことと同じです。これは事前に知っておくべきセラミック治療のデメリットといえます。

メタルクラウンと比べ歯を削る量が増える

金属で作られた被せ物(メタルクラウン)は、セラミックのように割れやすいことはありません。強い力が加わってもしっかりと耐えます。金属を地面に落としても割れないことと同じです。そのため、歯を削る量を最小限に抑えて、被せ物を薄く仕上げることができます。
天然の歯は、一度削るともう二度と元には戻らないことから、歯を削る量を抑えられるのは非常に大きなメリットです。一方、セラミックは「強い衝撃に弱い」傾向にあるため、メタルクラウンよりは厚めに作る必要があります。その結果、歯を削る量がメタルクラウンよりも多くなるというデメリットが発生します。

治療費が高額になる傾向にある

セラミック治療は、保険が適用されませんので全額自己負担となります。「自由診療」と呼ばれるものです。その分、品質の高い材料や高度な治療法などを行えることから、見た目や機能性の高さなどを追及することが可能となります。
ただし、保険診療の銀歯よりも高額になるというデメリットは避けられません。とはいえ、セラミックなら再治療のリスクを下げられることから、生涯にかかる歯科治療費自体は安く抑えられる傾向にあります。

【まとめ】歯の詰め物・被せ物(差し歯)をセラミックにするメリットとデメリット

このように、歯の詰め物や被せ物をセラミックで製作すると、上述したようなメリット・デメリットが生じます。それらを踏また上で、最善といえる治療法を選択することが大切です。

公開日:2020.03.04 更新日:2024.01.30
この記事の監修医師:
恵比寿山田歯科医院
歯科医師 歯学博士 山田知里

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