セラミック歯に欠かせない歯の土台の役割と種類COLUMN

セラミック歯に欠かせない歯の土台の役割と種類

2020年09月08日

監修医師:
歯科医師 歯学博士 山田知里

セラミック歯を被せる治療の流れのなかで、どうしても欠かせないことがあります。それは、『土台をつくる』ということです。土台によって、その歯の寿命が大きく変わります。

歯科の治療では、土台のことを『コア』といいます。

コアとは、「芯」「中核部」という意味です。歯の中心を支えている、大切な治療になります。

歯の土台(コア)の役割

虫歯が深く、神経をとってしまった歯は、栄養が行き届かないため歯は枯れ木のようにもろくなってしまいます。そのままでは歯が割れてしまうため、歯の根部に土台(コア)をたて、補強した上で被せ物をします。

歯の土台(コア)とは、家に例えると大黒柱の役割りになります。

柱が丈夫なものでないと、どんなに立派な家を建てても、地震で倒れてしまったり、雪が積もってつぶれてしまったりします。雨でさびてしまうのは、もってのほかです。

歯には、食事の時だけでなく、ここ1番という緊張時にはぐっと噛みしめたり、寝ているときに無意識に歯ぎしりをしていることで、毎日色々な方向から強い力がかかっています。

人の噛む力とは、特別なアスリートでなくても、自分の体重を支えられるほどの力があるといわれています。

一般的に使用されているメタルコアは金属でできているため丈夫ですが、硬すぎるため、土台を支える歯質があまり残っていない歯では、強い力がかかった時に歯が割れてしまうことがあります。この場合、歯を残すことが難しい割れ方をすることが多く、抜歯につながる可能性が高くなります。

よって土台(コア)には、「硬さ」と「しなり」が大切です。

「しなり」とは、竹のように曲がるけれど、折れない強さです。

特に歯質の少ない歯には、硬さやしなり具合が歯と似ているファイバーコアがおすすめです。

さまざまな環境で、歯を支える土台(コア)は、歯の要の部分になります。

歯の土台(コア)の種類

大きく分けて、土台の素材には、「保険診療」でできるものと「自由診療」でできるものがあります。

どちらが「良い」「悪い」というわけではなく、素材の性質が異なります。

保険診療できるもの

  • メタルコア
  • レジンコア

自由診療でできるもの

  • ファイバーコア
  • ゴールドコア

それぞれ、歯やお口の状態にあったものが治療に選ばれます。

土台は、目にみえないため被せ物と比較して軽視されやすいものですが、セラミック歯を長持ちさせるためには、とても重要です。見た目だけでなく歯の寿命を伸ばすためにも、最適な治療方法を選ぶようにしましょう

土台(コア)のメリットとデメリット

次に各土台(コア)のメリットとデメリットを見ていきます。

メタルコア(保険診療)

保険診療で最も一般的に使用される金属を使った土台です。強度があり、安価なことから多く使用されています。

メリット

保険診療内で治療することができます。

デメリット

強度はあっても、しなりはないため、歯や歯根が割れてしまうことがあります。また時間がたつと、銀の成分がとけだし、歯や歯肉が黒く変色したり、金属アレルギーのリスクが高まります。歯を削る量も他の治療法に比べて多いです。

レジンコア(保険診療)

プラスチック素材の土台(コア)です。メタルコアに比べて強度は低いですが、直接お口の中で製作するので、その日のうちに土台が入ります。

メリット

保険診療内で治療することができます。メタルコアに比べて歯を削る量が少なく、歯根が割れることも少ないです。金属を使わないので、金属アレルギーの心配がありません。

デメリット

ファイバーコアと比べて強度、弾性(しなり)、耐久性が低く、再治療が必要になった場合の除去が困難です。また、まれにプラスチックの材料にアレルギーが起きてしまうこともあります。

ファイバーコア(自由診療)

グラスファイバーというガラス繊維が芯につかわれています。強い力に耐えられるだけでなく、「しなり」があるため、土台(コア)の中でもっとも歯の質に近い素材です。歯根が割れにくく、特に大部分の歯質を失った歯に最適な治療法です。

またファイバーコアは、セラミック歯を被せたとき、自然な色や透明感が再現でるようにつくられています。

メリット

硬さや弾性(しなり)が歯とよく似ているので、歯や歯根が割れるリスクが少なく、劣化しにくく、長持ちします。また、金属と違って光の透過性があり、透明感があるので、セラミック歯をいれたときに土台が透けてみえてしまうということがなく、自然で透明感のある美しい歯を再現できます。

金属を使わないので、歯や歯肉の変色、金属アレルギーの心配がありません。

歯を削る量も少なくて済み、再治療になった場合も除去は比較的容易です。

デメリット

まれに、プラスチックの材料でアレルギーを起きてしまうことがあります。

ゴールドコア(自由診療)

金を使った土台(コア)です。金だけでは柔らかすぎてしまうので、14Kや18Kの合金が使用されます。

メリット

耐久性が高く、腐食や変色が起こりにくい金属です。金は、金箔として食べられるほど、身体にもっともなじむ金属といわれています。

金属アレルギーの発生リスクが低い、安定した素材です。またメタルコアよりも精密に作ることができるため、再治療のリスクが減ります。

デメリット

メタルコアよりは「しなり」があり硬さもある金ですが、強く力がかかる歯や、くいしばりなどがある方には、歯や歯根が割れてしまうことがあります。

また口の中で直接製作するファイバーコアやレジンコアより歯を削る量が多くなります。

透過性がないため、歯の透明感を再現しにくいです。

【まとめ】セラミック歯に欠かせない歯の土台の役割と種類

歯が割れてしまう、歯の根っこが割れてしまうということは、その歯を残すことは難しくなり、残念な結果として抜かなければならないということにつながります。

そうなってしまうと、義歯やインプラントなど、もっと複雑な治療が必要になってきてしまいます。何より、自分の歯に勝るものはありません。

被せ物だけでなく土台(コア)が歯の寿命に大きく関わっていることを知り、最適な治療方法の選択肢をすることは、将来的に自分の歯を守ることにつながります。

公開日:2020.09.08 更新日:2024.01.30
この記事の監修医師:
恵比寿山田歯科医院
歯科医師 歯学博士 山田知里

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